オンコール体制は違法?労働時間の判例・待機手当なし・無給は?

オンコール体制は違法?労働時間の判例・待機手当なし・無給は?

オンコール体制は違法なのか、労働基準法で問題にならないのかなどオンコールと法律の関係について解説します。

またオンコール手当や待機時間、不満があるときの対処法などについても解説します。

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オンコール体制とは?

オンコール体制とは、夜間や休日に職場外で待機し、利用者や患者の緊急時に備えて連絡を受けた際に対応する勤務形態です。

看護師や介護職、医師などが対象で、電話対応のみで済むこともあれば、必要に応じて出勤・訪問を行うこともあります。

オンコール体制は違法?

オンコール体制自体は違法ではありませんが、待機時間が「労働時間」に該当するかどうかがよく問題になります

労働時間とは、労働者が「使用者の指揮命令下で働く時間」のことを指します。

そのため、使用者の指揮命令下と言えるかどうかが判断基準になります。

オンコールでの呼び出し頻度・対応時間、待機中の制限度合いなどを鑑みて個別具体的に判断されます。

オンコールの労働時間の判例

①医療法人社団誠聲会事件

まず、「医療法人社団誠聲会事件(千葉地裁令和5年2月22日判決)」という判例があります。

ここでは、研修医として働いていた医師のオンコール待機時間が労働時間に当たるかどうか問題になりました。

結果として、オンコールの対応頻度・勤務時間は比較的短時間で、病院外の待機していた時間は業務の拘束性が低いとして労働時間とは認められませんでした。

判決は当番時の対応頻度や勤務時間も比較的短時間であるとし、確かに処置のために出勤することがあり得るので精神的な緊張と待機場所の制約はあるものの、労働からの解放が保障されていなかったとまではいえないと述べています。
引用元:労基旬報

②アルデバラン事件

次に「アルデバラン事件(横浜地裁令和3年2月18日判決)という判例があります。

ここでは、介護施設で勤務する看護師の緊急看護対応のための待機時間が労働時間に当たるかどうかが問題になりました。

こちらでは、頻度と稼働時間から労働からの解放が保障されていないとして、待機時間は労働時間として認められました。

呼出しの電話を受ければ、実際に緊急出勤に至らなくても、相当の対応をすることを義務付けられていたことなど、対応の頻度が高かったことを指摘し、原告の主張どおり、NO.1の携帯電話機を所持し緊急看護対応業務のために待機していた時間を労基法の労働時間として認めました。
引用元:労基旬報

オンコール体制が労働基準法で問題になるケース


労働基準法で問題になる可能性が高いオンコール体制の具体例について説明します。※実際の事例とは異なります。

①オンコールで移動が厳しく制限される

看護師Aは週3回、夜間に「自宅から半径2km以内で待機し、電話から15分以内に出動できること」が義務づけられていました。私的外出や飲酒は禁止され、実質的に自宅に拘束されている状態でしたが、勤務先は待機時間を労働時間として認めず、手当も支払いませんでした。

⇒このようなケースは労働基準法上の「労働からの解放がない状態」とされ、労働時間と認定される可能性があります。

②オンコール勤務の頻度が高い

介護施設Bでは夜勤が不足していたため、職員Cに月30回のオンコール当番を命じていました。Cは常に電話に対応できるよう就寝もままならず、慢性的な睡眠不足に。最終的に体調を崩して休職しましたが、施設側はオンコールは「勤務外」として管理していました。

⇒過度な拘束と健康障害の因果関係が認められると、労働基準法に抵触する可能性が高いです。

③オンコール出動時間が労働時間になっていない

病院Dでは、オンコール当番中の出動対応について、実際の移動時間を労働時間に含めていませんでした。たとえば、電話を受けて30分かけて病院に駆けつけた時間を「プライベート移動」として扱い、診療開始後からを労働時間とみなしていました。

⇒この運用は出動命令下の移動時間も業務と判断される可能性があり、未払い賃金請求のリスクがあります。

オンコールは休日扱い?

オンコール待機中の時間は、基本的に「労働時間」ではないと見なされるため、「休日扱い」と言えるかもしれません。

※休日とは原則として午前0時から午後12時までの24時間を指しますが、オンコールで待機する時間は夕方から翌朝など日をまたぐことが多いため、休日と言えるかは勤務状況次第です。

ただし、呼び出しで実際に出勤した場合や、行動が大きく制限されている場合は、その時間が労働時間とされる可能性があります。

また、オンコール勤務では手当や代休が付与されることが多くなっています。

オンコールの待機手当なし・無給は違法?支払い義務は?

オンコール待機中の時間が「労働時間」に該当するかどうかで、金銭の支払い義務は変わります

待機中が「労働時間」と見なされるような状況であれば、賃金の支払いが必要です。

一方で、自宅で自由に過ごせる状態で待機するだけであれば、労働時間とみなされず、金銭の支払い義務は法的にありません。

とはいえ、手当がない企業は不人気で採用が難しくなることが多いと思われ、オンコールの待機手当や出勤手当は多くの企業で支払われています。

オンコール手当の金額相場


例えば、訪問看護に従事する看護師のオンコール待機手当の相場金額は、1回あたり1,000〜3,000円です。調査データによると、第1担当者の待機手当は以下のとおりです。

金額 割合(%)
1,000円未満 6.6%
1,000円〜2,000円未満 34.2%
2,000円〜3,000円未満 31.0%
3,000円〜4,000円未満 10.1%
4,000円〜5,000円未満 3.8%
5,000円以上 4.1%
設定なし 3.2%
その他 4.4%
未回答 2.5%

参照:訪問看護ステーションにおける24時間対応体制に関する調査研究事業報告書

上の表は待機手当の金額ですが、待機手当以外に出勤手当が支払われることもあります。

オンコールの待機時間の過ごし方5つ

①家でできる趣味に没頭する

オンコール中は外出が制限されることが多いため、自宅でできる趣味に取り組むのがおすすめです。例えば、読書、手芸、ゲーム、楽器の練習など、集中できて気分転換になるものが良いでしょう。

こうした趣味は精神的なリフレッシュにもつながり、待機中のストレスを軽減します。

あくまでも呼び出しにすぐ対応できる態勢を保つことが前提ですが、自由時間を有効活用できる手段として非常に有効です。

②自宅周辺で軽く体を動かす

運動不足の解消と気分転換を兼ねて、自宅の近くでウォーキングやストレッチをするのも効果的です。

オンコール中は遠くまで出かけられませんが、緊急対応に備えて体調を整えるためにも軽い運動は推奨されます。

無理のない範囲で体を動かし、呼び出しがあった際にすぐ対応できるよう携帯を携帯しておくと安心です。

③オンライン学習に取り組む

スマートフォンやタブレットで、オンライン講座やYouTubeの学習動画を見ることで、スキルアップを図ることができます。

医療従事者であれば看護技術の再確認や最新の医療情報の習得など、仕事に直結する内容も良い選択肢です。

待機時間を自己研鑽に使うことで、実務にも好影響を与えることができます。

④日常の家事を済ませる

洗濯や掃除、料理の下ごしらえなど、家庭内の軽作業をこなす時間として活用するのもおすすめです。

特にまとまった時間が取りにくい人にとって、オンコールの待機時間を家事に使えば生活の効率が上がります。

ただし、呼び出しにすぐ対応できるよう、片手間で済む作業やすぐ中断できる内容に留めるのが理想です。

⑤リラックスできる環境を整えて休息する

いつでも動けるように準備しつつ、心身を休める時間にすることも重要です。ア

ロマや音楽を使ってリラックスしたり、横になって休息したりと、過度な緊張状態を避ける工夫をしましょう。

過労やストレスが蓄積すると、本番の対応に支障をきたす可能性があるため、待機中の過ごし方として「質の良い休息」を意識することが推奨されます。

オンコールがストレスで辛いときは?

オンコール勤務で「いつ呼ばれるかわからない」という不安が続くと、強いストレスや睡眠障害につながります。

まずは自宅で心身をリラックスできる環境を整えることが大切です。音や光を遮る工夫や、呼び出しがあった際の動線を確保しておくと安心感が生まれます。

さらに、日中に短時間でも仮眠を取る・規則正しい生活を心がけるなど、体調管理を徹底して、体と心の状態を健康に保てるようにしましょう。

関連記事:オンコールがストレスで寝れない…原因と対策7個

オンコール勤務に不満があるときの対処法6つ

①上司にオンコールの頻度や体制を相談する

オンコール勤務に対して不満を感じた場合、まずは上司に率直に相談することが大切です。

現在の勤務頻度や拘束時間の長さ、手当の有無など具体的な問題点を整理して伝えることで、他スタッフとの交代制や回数制限など体制見直しにつながる可能性があります。

早期に相談することがストレス軽減の第一歩です。

②オンコール回数の調整を申し出る

月に何度もオンコール勤務があると生活に支障が出ることも。業務量が偏っていると感じたら、回数を見直してもらえるよう調整を依頼してみましょう。

チームでの公平なシフト組みや交代制が整備されていれば、継続的な負担の軽減にもつながります。自分がつぶれてしまう前に、無理なく続けられる体制の交渉が大切です。

③職場内でオンコール負担の共有を提案する

オンコール勤務が特定の人に集中している場合、不満や疲弊の原因になります。

チーム全体で勤務を共有するような制度やルールの導入を提案することで、組織としての負担軽減が実現することもあります。

声を上げることで、職場環境の改善につながる可能性があります。

④待機中の不安を減らす工夫をする

オンコール中に常に緊張していると心身が休まりません。

呼び出しがあった際にスムーズに動けるよう、必要な持ち物や服装を準備しておいたり、通話の着信音を聞き逃さないように設定を工夫するなど、待機中の不安を軽減できる対策を講じましょう。

事前準備で気持ちに余裕が生まれます。

⑤総合労働相談コーナーを利用する

勤務時間の扱いや手当の支給が適正でないと感じる場合は、厚生労働省が運営する「総合労働相談コーナー」を利用することをおすすめします。

無料で相談可能であり、必要に応じて労働基準監督署への申告なども視野に入れられます。法律に基づいたアドバイスが受けられます。

⑥オンコール制度のない職場へ転職する

どうしてもオンコール勤務が心身に合わない場合は、制度のない職場へ転職することも一つの選択肢です。

訪問看護や病院以外にも、夜勤なし・オンコールなしの働き方を導入している職場は増えています。働き方を変えることで生活の質や仕事への満足度が大きく向上することもあります。

まとめ

オンコール勤務に関する違法性の有無は、待機中の制限の度合いや手当の有無など、勤務実態によって判断されます。

「自分の働き方が異常ではないか?」「あまりにもしんどい…」「相談しても聞き入れてもらえない」という状況のときは「総合労働相談コーナー」など専門的なところへ相談するのも手です。

倒れる前に対処法を実践し、今後のことを考えて動いていきましょう。

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