介護施設(特養)のオンコール実態・基準・マニュアル・内容

介護施設(特養)のオンコール実態・基準・マニュアル・内容

介護施設でのオンコール勤務に不安や疑問を感じていませんか?

本記事では、オンコールの基本から実態、手当、対応方法、負担軽減策までを詳しく解説します。これから介護業界で働く方や、オンコールに関心のある方は、ぜひ参考にしてください。

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オンコール勤務とは?

介護施設におけるオンコール勤務とは、主に夜間や休日に看護師が施設外(通常は自宅)で待機し、利用者の急変時に電話対応や必要に応じて出勤する体制を指します。

これは、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)など、夜間に看護師の常駐が義務付けられていない施設で導入されています。

オンコール体制は、利用者の安全確保と緊急時対応のために必要とされており、労働基準法上、待機中の手当支払い義務や回数の上限は定められていません。そのため、施設ごとに運用方法や手当の支給額が異なるのが現状です。

特別養護老人ホームと介護老人保健施設の違い

特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)の違いについて表でわかりやすく説明します。

項目 特別養護老人ホーム(特養) 介護老人保健施設(老健)
目的 長期的な生活支援を提供し、終身利用が可能な生活の場。 在宅復帰を目指すためのリハビリテーションを中心とした短期的な施設。
入居条件 原則、要介護3以上の高齢者。特例で要介護1・2も可。 要介護1以上の高齢者。特定疾病による40歳以上の方も対象。
入居期間 基本的に終身利用が可能。 原則3~6ヶ月程度の短期利用。状態により延長も可能。
主なサービス 生活支援、身体介護、健康管理、看取り介護など。 医療ケア、リハビリテーション、介護サービス、栄養管理など。
医療体制 医師は非常勤が多く、看護師は日中常駐。 医師が常勤し、看護師も24時間体制で常駐。
費用目安 月額約6~15万円程度。所得に応じた負担軽減制度あり。 月額約9~20万円程度。リハビリや医療体制により費用が変動。
入居のしやすさ 入居待機者が多く、入居まで時間がかかる場合がある。 入居待機期間が比較的短く、入居しやすい傾向がある。
施設の特徴 生活の場としての機能が強く、家庭的な環境を提供。 医療と生活の中間施設として、在宅復帰を支援する役割を担う。
オンコール体制 約91.8%の施設で夜間オンコール体制を導入。看護師は自宅待機し、夜間の緊急時には電話対応や必要に応じて出勤。月平均待機回数は約9.1回、電話対応は約2.4回、出勤はほとんどない。 約14.2%の施設でオンコール体制を導入。多くの施設では医師や看護師が24時間常駐しており、オンコール体制の必要性は低い。

※参照「特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査報告書」

介護施設におけるオンコールの実態

オンコールの実態については「特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査報告書」に詳細なデータが掲載されています(ただし、2016年の資料のため、少し古いデータです)。

オンコール対応状況、待機回数、電話対応回数のデータを紹介します。

オンコール対応状況

特別養護老人ホーム 介護老人保健施設
オンコール体制がある 91.8% 14.2%
オンコール体制はない 6.7% 80.1%
無回答・不明 1.5% 5.7%

オンコール待機回数(1ヶ月あたり)

特別養護老人ホーム 介護老人保健施設
0回 9.3% 29.9%
1〜4回 11.0% 29.9%
5〜9回 36.0% 16.9%
10〜14回 24.0% 13.0%
15回以上 15.2% 2.6%
無回答・不明 4.5% 7.8%
平均待機回数 9.1回 4.1回

オンコール待機中の電話対応回数(1か月あたり)

特別養護老人ホーム 介護老人保健施設
0回 26.9% 54.2%
1〜4回 46.5% 33.3%
5〜9回 9.7% 4.2%
10〜14回 2.8%
15回以上 1.7%
無回答・不明 12.5% 8.3%
平均電話対応回数 2.4回 1.0回

オンコール勤務の手当と待遇

オンコール勤務の手当の相場は以下のとおりです。

手当の種類 支給額の目安
(1回あたり)
備考
待機手当 約1,000~2,000円 施設によっては支給されない場合もあります。
電話対応手当 約1,000~1,500円 支給されない施設も多く、確認が必要です。
出勤手当 約2,000~3,000円 緊急出勤時に支給される場合があります。

オンコール待機中の時間は、労働基準法上の「労働時間」とはみなされない場合が多く、手当の支給は施設の裁量によります。

ただし、実際に出勤した場合は労働時間と認められ、時間外手当の支払いが必要です。

オンコール勤務の手当や待遇は施設によって異なるため、就職や転職を検討する際は、事前に確認することをおすすめします。

介護施設のオンコール内容


オンコール業務の主な内容は以下のとおりです。

内容 説明
電話対応 利用者の容体変化や急変時に、夜勤スタッフ(主に介護職)からの電話を受け、指示を出す。
緊急出勤 指示だけでは対応が難しい場合や医療行為が必要な場合は、施設に駆けつけて対応(点滴・吸引・バイタル確認など)を行う。
服薬・処置の指示 薬の追加や一時的な処置(軟膏塗布、湿布の可否など)について、医師との連携をとりながら指示を出す。
医師との連絡・判断 医師に連絡を取り、指示を仰ぐか、救急搬送の判断を支援することもある。
救急搬送の判断補助 すぐに救急搬送が必要かどうかの判断を夜勤スタッフと一緒に行い、必要に応じて同意書の確認や家族への連絡も指示。

看護師の配置基準とオンコール体制

介護施設における看護師の配置基準は、施設種別や法的要件により異なります。特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)については以下のとおりです。

特別養護老人ホーム 介護老人保健施設
看護師配置基準 入所者3人に対して看護または介護職員1人が必要。
※看護師は、利用者が30人以下の施設で1人以上、31〜50人の施設で2人以上、51〜130人の施設では3人以上の配置が必要。
入所者3人に対して看護または介護職員1人が必要。
※看護師は、看護と介護職員の合計の2/7が標準。
オンコール体制 オンコール体制が一般的 オンコール体制は不要が一般的

介護老人保健施設は、看護師が常時夜勤体制をとっている施設が多いため、オンコール体制が不要なケースが多くなっています。

介護施設のオンコール体制のマニュアル

特別養護老人ホームのオンコール体制のマニュアルについて具体例を紹介します・マニュアルは各施設によって異なります。

項目 内容
オンコール担当者の決定 月ごとに看護師が交代で割り当て(1週間交替やローテーション制が一般的)
携帯電話の所持 オンコール専用携帯電話を貸与、緊急連絡はすべてこの番号に集中させる
対応時間 17:30~翌9:00(土日祝は終日)
※日中は常勤看護師が勤務
連絡のルール 夜勤介護職員が状況判断 → 必要と判断した場合のみ看護師に電話
コール判断基準 以下の場合は必ず連絡
・意識障害、けいれん
・発熱39℃以上
・出血を伴う外傷
・呼吸困難やチアノーゼ
・嘔吐・下痢が2回以上続く場合
連絡時の対応内容 (1)状況を聞き取り
(2)指示(対応・救急搬送の判断など)
(3)翌朝記録確認
指示の記録 オンコール記録表に日時・発信者・症状・指示内容を記入(翌朝管理者も確認)
緊急搬送時の対応 (1)家族・施設長に連絡
(2)引率介護職員の選定
(3)搬送記録の作成
備考 状況に応じて「コールすべきでない事例」の研修を定期実施

無駄な呼び出しを防止するため、判断基準(コールすべき状況とすべきでない状況)を明文化しましょう。

また、フローチャート形式で記載して介護職員も迷わず対応できるように、対応マニュアルを図式化するとトラブルが減ります。

オンコール対応の具体的な流れ

介護施設におけるオンコール対応の流れは、主に「夜間・休日に医療職が不在となる時間帯」に、介護職員が判断し、看護師へ連絡するという仕組みです。

以下にステップごとで具体的にご説明します。

【STEP 1】異常の発見

夜勤スタッフなど現場担当者が、利用者の体調不良や事故(転倒、発熱、嘔吐など)を発見します。そして呼吸、意識、バイタルサインを確認。

バイタル例:体温・血圧・脈拍・SpO2 など。

ポイント:「いつもと違う」行動や表情を見逃さない。

【STEP 2】オンコール連絡の要否判断

現場で初期対応可能か、すぐに医療的判断が必要かを判断します。その際、施設のオンコール連絡基準に照らし合わせて判断します。

例)以下は原則連絡対象:
・意識障害、けいれん
・発熱39℃以上
・出血を伴う外傷
・呼吸困難やチアノーゼ
・嘔吐・下痢が2回以上続く場合

【STEP 3】オンコール看護師へ連絡

オンコール用の電話番号(施設で決められた専用番号)に電話します。そして状況を正確に伝えるために以下の項目を報告します。

報告内容 具体例
利用者情報 氏名、年齢、既往歴など
現在の症状 バイタル・症状・いつからなど
実施済の対応 転倒→止血済、解熱剤の有無など
職員の所見 いつもと比べた変化・不安要素など

【STEP 4】看護師が電話で判断・指示

電話で状況を確認し、次のいずれかを判断します。必要に応じて家族や主治医への連絡指示も行います。

・翌朝まで経過観察
・看護師が出勤して対応
・救急搬送の指示

【STEP 5】対応後の記録・報告

「オンコール記録用紙」または「記録システム」に詳細を記録します。翌朝、看護師や施設管理者に申し送りを行います。

救急搬送があった場合は、報告書・ヒヤリハット報告を提出します。

オンコール勤務のメリットとデメリット

オンコール勤務のメリット・デメリットを一覧でまとめると以下のようになります。

メリット デメリット
・看護師の拘束時間が限定される
・介護職の不安を軽減できる
・緊急時も医療的判断が得られる
・看護師の心理的負担が大きい
・拘束されるが労働時間ではないケースもある
・判断の責任が重くなる

オンコールがストレスになりやすい人の特徴5つ

1. 睡眠の質が悪い・中断に敏感な人

オンコールは夜間や深夜でも突然呼び出される可能性があるため、睡眠の質が重要です。

もともと眠りが浅い人や、一度起きると再入眠しづらい人は、オンコールによる生活リズムの乱れが大きなストレス要因となります。

翌日の勤務に影響が出ることも多く、慢性的な疲労につながりやすくなります。

2. 緊急判断に自信がない人

電話対応で状況を聞き取り、緊急性の有無を判断する能力が求められます。

この判断に自信がない人は「誤判断してしまったらどうしよう」と常に不安を抱えることになり、精神的なプレッシャーが大きくなります。

また、対応後に「本当にこれでよかったのか」と悩む傾向も強いため、ストレスが蓄積しやすいです。

3. 常に気を抜けない性格の人

オンコール中は「いつ電話が鳴るか分からない」という緊張感がありますが、真面目で責任感が強く、常に完璧を求める人ほどリラックスできず、気持ちの切り替えが苦手です。

その結果、日常生活でも気を張り続けてしまい、オンコールが終わった後も疲れが取れにくくなります。

4. 家庭や子育ての責任が重い人

小さな子どもがいる、介護をしているなど家庭内でも責任が多い人は、オンコール対応によって家庭生活が妨げられることが強いストレスとなります。

呼び出し時にすぐ家を空けられない、誰かに頼めないといった環境は心理的な圧迫感につながります。

5. ワークライフバランスを重視する人

仕事とプライベートの時間を明確に分けたい人にとって、オンコールは「仕事から完全に解放されない状態」を意味します。

時間外でも対応を求められることに不満を持ちやすく、生活の質が下がったと感じてストレスを感じる傾向があります。

オンコール勤務に向いている人の特徴4つ

1. 緊急時にも冷静に対応できる人

オンコール中は、急変や転倒など突発的な事態に対応する必要があります。焦らず冷静に状況を判断し、的確な指示を出せる人は非常に頼られます。

精神的な安定性と判断力が求められる場面が多く、現場スタッフや利用者の安心にもつながります。

2. 柔軟なスケジュール対応が可能な人

オンコールは深夜・早朝・休日を問わず発生するため、不規則な時間帯の対応が可能な柔軟なライフスタイルを持つ人に向いています。

生活リズムの調整力があり、必要に応じて現場に駆けつけることに抵抗のない人が適任です。

3. 責任感が強く、最後まで対応できる人

オンコールでは、判断の重みが大きく命に関わることもあります。

たとえ電話での対応であっても、自分の判断に責任を持ち、必要なときは出動する覚悟を持てる責任感の強い人が信頼されます。中途半端な対応が許されない職務です。

4. 施設やスタッフとの連携を大切にできる人

オンコール対応では、現場スタッフとの信頼関係とスムーズな情報共有が不可欠です。

普段から他職種と連携しやすい関係を築ける人、丁寧なコミュニケーションができる人は、オンコール対応時にも的確な判断と安心感を提供できます。

オンコール勤務の負担軽減策4つ

1. オンコール代行を導入する

オンコール代行とは、看護師や医師の代わりに外部の専門コールセンターが夜間や休日の電話対応を行うサービスです。

利用者からの連絡があった際、まず代行業者が一次受けをし、緊急度や内容に応じて本当に看護師に連絡が必要かを判断してくれます。

これにより、緊急性の低いコールや単なる問い合わせで看護師が起こされるケースが減少します。精神的・肉体的負担が大きいオンコール業務を合理化する手段として、多くの施設で導入が進んでいます。

2. 対応マニュアルの整備と職員への共有

オンコール体制に関する詳細なマニュアルを整備し、現場職員と十分に共有することは、負担軽減の鍵です。

たとえば「この症状ならこの対応をしてから連絡する」「この時間帯はまず管理者に報告」などのフローがあるだけで、無用なコールが減り、看護師の対応負担が軽減されます。

また、マニュアルを定期的に更新・見直しすることで、現場の状況に即した柔軟な対応も可能になります。教育研修とセットで行うと効果的です。

3. 複数名での当番制・交代制

オンコール当番を1人に固定するのではなく、2~3名でローテーションを組むことによって精神的・時間的負担を分散できます。

たとえば週単位や日単位で交代することで、「いつも自分が出なければいけない」というプレッシャーから解放され、計画的に休息を取ることができます。

また、複数名体制であれば、緊急度に応じて対応者を分けるといった運用も可能になります。チーム全体で負担をシェアする体制構築が重要です。

4. オンコール頻度の見直し・業務分担の再検討

オンコール回数が多すぎると、日常業務に支障をきたすこともあります。現場での発生頻度やコール内容を分析し、そもそもオンコール対応が必要な件数がどれほどか見直すことが重要です。

介護職員や夜勤スタッフが初期対応可能な範囲を広げたり、医療的判断が不要なものはマニュアル対応にするなど、業務の再設計が必要です。

これにより、看護師が本当に必要な対応に集中でき、負担軽減につながります。

オンコール勤務に関するよくある質問

Q1. オンコール勤務中に外出は可能?

施設の規定・契約内容にもよります。

自宅待機であっても契約や施設の内規で「常に連絡が取れる状態」「すぐに駆けつけられる距離にいること」が義務付けられている場合、無断での長時間の外出は不可です。

逆に言うと、その場合、近所に短時間外出するくらいなら可能でしょう。

Q2. オンコール手当は出ますか?

多くの施設で「待機手当」と「呼出手当」があり、数百円〜数千円/回で設定されています。

金額や手当の有無は、勤務先によって異なるため、事前に確認しましょう。

まとめ

オンコール体制は、利用者の安全を確保するために重要な手段です。ただ、介護施設でのオンコール勤務は、働く人にとって大きな負担になることもあります。

オンコールの内容や頻度を確認し、軽減できる体制や支援策がないか検討しましょう。

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